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クランク・S字コースがどうしても苦手

クランク・S字コースがどうしても苦手

普通免許の第一段階後に行われる修了検定。一番の難所と言っても過言ではないのがこのクランク・S字コースではないでしょうか。まだみきわめの段階にいる方も、このコースに苦戦してなかなか次に進めないでいる方も多いと思います。

まず前もって知っておいて欲しいことが、車の運転を文章とイラストだけで解説するのにはやはり限界があります。でも、クランク・S字コースは単にたくさん練習すれば出来るようになる訳ではなく、頭で論理的に理解しているかどうかというのもとても重要です。今回はクランク・S字コースを徹底的に掘り下げて解説していきますので、運転の参考にしてください。

クランク・S字コースを攻略するためにはまず「内輪差」というものをよく理解することが大切です。その内輪差を理解する上で大切なのが、車のタイヤの位置を覚えること。車のタイヤの位置は上の図のような配置になりますが、前輪は右前輪が運転席の足元、だいたいアクセルペダルの真下辺りにタイヤがあります。左前輪は助手席の足元、だいたい助手席に座っている人の左足辺りにタイヤがあります。

後輪は右後輪が右側の後部座席の真下辺り、左後輪は左側の後部座席の真下辺りにタイヤがあります。普通自動車の教習車の場合、前輪と後輪は約3メートル離れています。これをホイルベースと言いますが、そのホイルベースが内輪差の起きる原因となっています。車をまっすぐ走らせている時は前輪と後輪は同じ場所を通りますので内輪差は出ませんが、ハンドルを回すと前輪の向きが変わり、それによって前輪と後輪の通る場所が違ってきます。

車が右や左にまがるときに、後輪が前輪よりも内側を通ることを「内輪差」と言います。内輪差はハンドルを回せば回すほど大きくなるのが特徴で、教習車の場合は最大1メートル近くになります。周回コースのカーブですとハンドルを回す量も少なかったのでそれほど内輪差が出ていませんでしたが、クランク・S字コースを通過する時はハンドルを回す量も大きくなるので内輪差もその分大きくなります。

では、内輪差はどのようにイメージすれば良いのか?私のおすすめの方法としては「後輪」ではなく「前輪」を意識して車を動かすことです。内輪差は後輪を意識するんじゃないの?と疑問を感じたと思いますが、後輪は運転席から遠く位置も後ろに付いているのでその感覚が掴みにくいです。それに対して、前輪は運転席のすぐ足元ありその場所も掴みやすいので、その前輪の位置から内輪差分(約1m)の距離を計算してハンドル操作するのがおすすめです。

例えば、上の図のように交差点を左折する時は、内輪差によって左後輪が曲がり角に乗り上げる可能性があります。内輪差が最大1メートルあるので、助手席の足元辺りにある左前輪と曲がり角を内輪差分の1メートルの距離を取って曲がれば左後輪は乗り上げないことになります。では、この1メートルをどうやってイメージすれば良いか?おすすめは助手席のドア。運転席や助手席のドアを全開に開けると、おおよそ1メートルなります。

次に内輪差を掴むのに重要なのが「目配り」になります。交差点を左折する時に曲がり角が全然見えないのでとても難しいですよね。その原因は車の死角です。死角は運転席から見えない範囲になりますが、下の図のようにその死角の範囲がとても広いです。右ハンドルの場合、運転席が右側に付いているので、右側よりも左側の死角が大きいのが特徴になります。

交差点を左折する場合、一度交差点に入ってしまうとその曲がり角が死角に入ってしまって、曲がり角の形や距離感はまったく分からなくなってしまいます。曲がり角が死角に入ってしまう前に曲がり角の形などをよく見ておくことがとても大切です。この目配りは交差点だけでなく、クランク・S字コースでも同じことが言えますので、クランク・S字コースが苦手な方は目配りに原因があるかもしれません。

それではまずはクランクコースから見ていきましょう。クランクコースの最大のコツはコース取りになります。コース取りが上手く出来ていないとどんなにハンドル操作を上手くこなしても通過することはできません。例えば、下の図のような曲がり角を①と②のどちらのコース取りで行けば通過しやすくなると思いますか?

答えは②になります。クランクコースの場合は道幅の狭いコースを直角に曲がらなければならないので、ハンドルを全部回し切って通過することになります。そのため、内輪差もその分大きくなるので曲がりやすくするため、できる限り車体を外側に寄せる必要があります。また、クランクコースは曲がり角が2回連続で出てきますので、そのコース取りは下の図のようになります。

次は曲がる時のハンドルを回し始めるタイミング。ポイントはやはり「目配り」になります。目配りのポイントは曲がる方向に顔をしっかり向けること。曲がる方向に目線を向けると、車をどこに向かって誘導すれば良いのか分かりやすくなります。反対に前を見続けてしまうのがNGです。どうしても前にポールが立っているので、ポールが怖くてポールに目線が集中してしまいがちなので注意しましょう。

次は曲がる時に車体のどの部分を意識して通過するのか。具体的に車体のどの部分がぶつかりそうになるのか、脱輪しそうになるのかを理解しておくと、危ない状況になった時に気づいて止まることができます。例えば、下の図のような左の曲がる場面で考えてみましょう。

意識する部分は2か所。車体の右先端がポールにぶつかないかというのと、左後輪が曲がり角に脱輪しないかを意識して確認しましょう。特に気を付けて欲しいのはポール。修了検定の場合においてはこのポールに接触してしまうと、危険行為としてそれだけで失格になります。

なので、ポールを通過する時はできる限り速度を落とすことが大切です。運転が上手な教習生の方がクランクコースを自慢げに素早く通過する方をよく見掛けますが、修了検定の時にハンドル操作を誤って止まり切れずポールに接触して失格というのはよくあるパターンです。曲がり切れなかった場合に備えて、できる限りゆっくりポールを通過するのがコツです。

今度は失敗した時の修正方法を見ていきましょう。まずは車体の先端がポールにぶつかりそうな場合。車体の先端部分は運転席からはっきり見えないので、無理をしないことが大切です。ちょっとでも不安を感じたら、一度止まってバックして修正してください。

この時の修正方法は「切り返し」というテクニックを使います。まずはバックする前に直接目視して後方の安全確認をします。修了検定では緊張で特に後方の安全確認を忘れやすいので気を付けてください。安全確認をした後、ハンドルを今まで回していた方向(左)とは反対方向(右)にたくさん回します。

この時、車を止めた状態でハンドルを操作しても構いません。その状態でバックしますが、バックする距離は1mくらいで十分です。次に前進する前にハンドルを進む方向(左)戻しておくのがポイントです。ハンドルを戻しておかないとまたポールに向かって進んでしまいます。「切り返し」はハンドルを「切って」バックし、ハンドルを「返して」前進するので切り返しと呼ばれています。

今度は後輪が脱輪しそうな場合。この時は「やり直し」というテクニックを使います。気を付けて欲しいのは実際に脱輪してしまった場合。脱輪してしまった場合はまずは一度そのまま停止しましょう。脱輪してしまった時にそのままバックして修正せずにその場を離れてしまうと、修了検定の場合は危険行為として失格になりますので注意してください。

それではやり直しの手順になります。やり直しは切り返しに比べるとかなり簡単です。切り返しと同じく、バックする前に直接目視して後方の安全確認をします。ハンドルはそのままの状態でゆっくりバックして曲がる前の位置まで戻ります。

曲がる前の位置まで戻ったらハンドルもまっすぐに戻します。そこから、もう一度曲がり直す訳ですが、後輪が脱輪するということはハンドルの回すタイミングが早かったということになります。なので、一回目に曲がった時よりも少しハンドルを回すタイミングを遅らせるのがポイントです。

ちなみにこの切り返しとやり直しはクランクコースとS字コースのうち、同一コースで4回行ってしまうと、「通過不能」として失格になってしまうのでやり過ぎには注意してください。しかし、3回までは少しの減点で済みますので、極端な話、クランクコースで3回の切り返し、S字コースで3回のやり直しでも失格になることはありません。なので、いざという時には無理をせずに切り返しとやり直しを使って乗り切りましょう。

今度はS字コースになります。クランクコースよりもS字コースの方が苦手という方が多いと思います。クランクコースはハンドルの回すタイミングさえ掴んでしまえば、そこまで難しくないコースですが、S字コースは連続カーブになるので車体感覚が完璧に掴めていないとすぐに脱輪してしまいます。

S字コースを上手く通過するのに必要なのは「タイヤの感覚」「目配り」「ハンドルの微調整」になります。目配りについてはクランクコースでも言いましたが、S字コースにおいても目配りはとても重要です。

ちょっと前にも説明しましたが、車には運転席から見えない範囲(死角)があります。前の死角だけでも車1台分(約5m)は見えていない状態になりますので、一旦S字コースに入ってしまうと自分が今コースのどの辺りを走行しているかが分かりづらくなってしまいます。

そこで重要なのが「目配り」です。車の近くはどう頑張っても死角で見えませんので、見えている部分から近くの状況や進む方向を予測するのがコツです。S字コースに入ってしまうとどうしても脱輪するのが怖くて、自然と目線が近くなる方が多いです。意識的に目線を先に向けて、進む方向をしっかり見定めることが大切です。

次は「タイヤの感覚」になります。S字コースを走る時は、具体的にどのタイヤが脱輪しそうになるのかをよく理解することがS字コースを攻略する重要なポイントです。例えば、下の図のような左カーブの場合だと、運転席(黄色の〇)から見て右側は右前輪が脱輪しそうになります。右前輪の位置は運転席の足元、だいたいアクセルペダルの真下辺りにタイヤが付いています。

運転席から見て左側は左後輪が脱輪しそうになります。左後輪の感覚は先程も説明しましたが、左前輪の位置から内輪差分(約1m)を予測して左後輪の通る場所をイメージするのがコツです。左前輪は助手席の足元、だいたい助手席に座っている人の左足辺りにタイヤがあります。見えないタイヤをイメージして走行するのはなかなか簡単なことではありませんが、実際に何度も脱輪していくうちに段々とその感覚が掴めていきますので根気よく練習をしてみてください。

最後はハンドルの微調整になります。クランクコースの場合はハンドルを全部回して曲がりますが、S字コースの場合は緩いカーブになるのでハンドルを全部回さずに必要な分だけ回して微調整するのがコツです。

S字コースが苦手な人でよくやりがちなのが、ハンドルを一気に全部回したり戻したりすること。ハンドルを全部回し切ってしまうと車が曲がり過ぎてしまって確実に脱輪します。ハンドルは途中で回すのをやめて一定の量をキープすることが大切です。だいたいのハンドルの回す量の目安は一回転くらいになります。目線を先に向けて車がどっちに向かって進んでいるのかをよく見極めて、ハンドルを微調整することを意識してみてください。

最後になりますが、クランク・S字コースは第一段階においての大きな山場になります。これが出来るようになると、第一段階が終わりと言っても過言ではありません。みきわめにおいても修了検定においても、このクランク・S字コースが教習生の方々の前に立ちはだかる大きな壁となることでしょう。ですが、それを乗り越えれば第二段階がみなさんを待っています。ここが正念場だと思って頑張ってください。

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